1年の中で最も過ごしやすい季節といわれる“うりずん”の沖縄から、「沖縄の色Ⅱ」と題し、沖縄県立芸術大学 久保田寛子 氏 にオンラインでご講演いただきました。
昨年の春のサロン開催後、「ぜひ続編を」と多くの方にお寄せいただいたリクエストにお応えする形で、コロナ禍を経て日常を取り戻しつつある沖縄の街と公共交通機関の様子や、久保田氏の専門領域である工芸まで幅広いジャンルで、数多くの画像資料とともにお話いただく盛りだくさんな内容でした。
2019年の火災から3年半が経過した首里城は、その復元に一般の方がボランティアで参加できる機会があったとのこと。破損した首里城正殿の柱の礎石を再利用し「ニービの粉」を製作するというもので、これが漆塗りの下地素材となるそうです。
創建後、複数回焼失している首里城は、その都度継承される資料に基づき再建されてきました。今後さらに復元が進み、その鮮やかな朱色がよみがえる時、地元の方はもちろん、ボランティアで参加された観光客の方にとっても一層特別なものとなり、沖縄の歴史や文化の象徴として存在し続けることと思います。
歴史や文化の継承という点では、久保田氏の専門領域である工芸(染織)の話も興味深いものでした。国が指定する伝統的工芸品(織物)38品目のうち約3分の1が沖縄のものであるということですが、沖縄県としてもその継承に取り組まれているようです。
「首里染織館suikara」や「おきなわ工芸の杜」などの施設が、これら伝統工芸の学びや体験、情報発信の場となっており、若手を育成し未来へ繋げていく役割を担っているとのこと。「伝承ではなく伝統として、いかに今の時代を生きる人たちがつくっていくのか。私自身も若手とともに伝統をつくり、人材を育てていきたい」という久保田氏の言葉が大変印象的でした。
公共の色彩(首里城をはじめとする沖縄の街の色)、私的な色彩(日常生活で使われる染織品)、双方の側面からのご講演は当研究会の活動意義について改めて考えさせられるものでした。再度ご登壇いただける日を楽しみに待ちたいと思います。
(松崎)
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