総会の一環として開催した講演会は、この機に当会会長から顧問となった大橋啓一氏による「広島城の歴史と美しさ」という講演テーマで行いました。史実としての城の変遷を辿りながら、その周辺の色彩や美に関わる内容で、参加者においても新たな発見を得たことと思われます。原爆の爆風によりほぼ全壊した広島城でしたが、がれきを集めてでもすぐに天守閣再建に取りかかった逸話の披露から、当時の市民にとって城がいかに失いがたい存在であったかがうかがえました。昭和33年の復興博にあわせ鉄筋コンクリート造で本格再建された広島城ですが、現在は木造によってさらに原形に近い復元が目指されています。堅牢な反面、耐久年数が数十年に限られる鉄筋コンクリート造を捨て、手を入れれば数百年もつ木造に作り替えようとする意欲的なプロジェクトです。廃虚のまま保全されている原爆ドームとは対照的に、広島城はいつまでも生き続けるさまにその象徴性を見ていることだとの解釈も提示されました。大橋氏の「城が復元できてこそ復興が遂げられる」という言葉は、戦後78年目にあって未だ完全とは言えない復興の重たさと、近い将来の城の木造再建がもたらす未来への希望、その両方を参加者に届けたことと思います。
(弥中)
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